メイクの仕方のなかでも特殊と言われる日本舞踊の舞台メイクについてまとめてみました。歌舞伎の役者さんが舞台でする隈取りや舞妓さんの白塗りといわれているメイクについて紹介します。
メイクの仕方と言っても、普段の生活でしているナチュラルメークや、チョットしたお出かけなど自分でするメイクの仕方とはちがい、プロのメイキャップ・アーティストのように特別な技術を持ってメイクするステージメイクや、映画の特殊撮影で施される特殊メイクがありますが、ここでは歌舞伎の役者さんが舞台でする白塗りといわれているメイクについて紹介します。白塗りと呼ばれるメイクの仕方は歌舞伎だけでなく、日本舞踊の舞台化粧や、花柳界の芸妓さんや京都の舞妓さんがしているメイクの仕方です。「美しく見られたい」ということは人間の本能的な欲望で、これを満たすために化粧がありますが、その歴史は古代エジプト人は今生み出されている化粧品のほとんどを何らかの形で使っていたということが遺物からわかっています。日本における化粧の歴史は古く、縄文時代にまでさかのぼりますが、文献として残っているものとしては「魏志」の倭人伝があります。これによると、3世紀頃の日本では男性は顔に「朱丹」と呼ばれる赤色顔料の丹(硫化水銀) という天然朱を塗っていたそうです。また、「日本書記」には当時の女性は「鉛花」と呼ばれる四酸化鉛の紅を塗っていたとの記録が残っています。現代にも通じる白化粧については、7世紀頃から貴族達は白粉と呼ばれる顔料を顔に塗る習慣が生まれ、この白粉には鉛白粉と水銀白粉の他にも穀物やハマグリの貝殻の粉末から作られたものもあったそうです。江戸時代の歌舞伎役者達は主に鉛白粉という塩基性炭酸鉛を顔に塗ったそうですが、これは強い塩基性のため肌を痛め、そのため当時の歌舞伎役者は肌荒れがひどく、化粧を落としたらひどい肌だったという話も残っています。また、化粧品のせいで命を落としたということもあったようです。現在の化粧品には、そのような体に有害な物質は使用できません。
メイクの仕方*白塗り*椎名桔平さん主演の映画「化粧師(けわいし)」というのがありましたが、日本舞踊の舞台化粧をする技術者のことを、『顔やさん』といいます。顔やさんの施すメイクの仕方はなかなか見ることが出来ませんが、日本舞踊の会などがあれば舞台裏(楽屋)を覗けば見ることが出来ます。メイキャップアーティストのような技術を教えてくれる学校があまり無く、顔やさんの親方に弟子入りするという徒弟制で技術を習得することが多いようです。顔やさんにメイクをしてもらう人は、まず石鹸で顔を洗い、化粧水などは一切つけずに顔やさんの前に座ります。頭には羽二重と呼ばれる鬘下を巻きます。石練という硬い鬢付けあぶらで眉つぶしをします。顔全体から顎・首・首筋・襟足全面に、手のひらや指先を使って鬢付けあぶらを塗ります、これが化粧下地で、全体に斑無く塗られていないと、おしろいがきれいに載りません。その上に水で溶かれたおしろいを板刷毛で塗っていきます。手早く丸刷毛や平刷毛を使い、軽く叩くようにしておしろいを定着させます。紅を混ぜたおしろいを目の上や頬に塗り、さらに上からおしろいを重ねます。眉を引くところに紅を差し、その上に眉を引きます。目元も目頭と目尻に紅を入れ、目の周りに墨を入れます(アイライン)鼻筋と額にはさらにおしろいを載せて際立てます。仕上げに口に紅を差します。くちびるもおしろいで白くしてあるので、なるべく口の内側に塗るようにして、口が大きく見えないようにする。メイクに仕方としての手順は顔やさんの親方によって手法が違う。眉墨や紅もあぶら墨を使ったり、水紅だったりとこだわりがあるようです。
メイクの仕方でも特に変わったメイクをしているというのが特徴の歌舞伎ですが、歌舞伎の役者さん達はみなさん御自分でメイクをされます。よほど小さい子役の方などは、そのお家のお弟子さんが手伝い、しだいに自分でできるようになるようです。歌舞伎で現される役柄は、鬘・衣裳・化粧の3つでその人がどういう人物なのかがわかります。特に化粧(メイクの仕方)では氏素性や職業、志向状態までわかり易くあらわしています。たとえば、きれいなお姫様やお姉さんと言った役柄は、基本どおりの白塗りです。また、お殿様や色男などやさしい男性も真っ白に塗られます。滑稽な役柄は少しトノコを入れた赤味がかった顔色で、眉は太めでさがっています。悪婆や悪人は目の周りなどが黒味を帯びていますし、血気盛んな暴れん坊は赤面(アカヅラ)といって一目瞭然です。歌舞伎はお話の殆どを江戸時代の時代背景に置き換えていますが、そのころの既婚女性の特徴で鉄漿(オハグロ)も独特の化粧法の一つでしょう。メイクの仕方として歌舞伎の化粧法の特殊最たるところは、あの助六さんなどの隈取でしょう。助六さんの場合は、しろぬりに軽い隈取ですが、お江戸を賑わす超色男をあらわしています。知盛などの怨霊をあらわす顔は青い顔色に仕上げ、オドロオドロした感じが見ている人の恐怖心を煽ります。メイクの仕方でこういった舞台でされる時代化粧の化粧品は、白塗りの白と眉などに使う黒・紅を差す赤・月代(さかやき・・・ちょん髷のてっぺんの剃られたところ)の青、この3色ですべてが賄われています。隈取の筋隈は気持ちの高ぶりを現す血管で静脈と動脈が青と赤で表現されているのです。怨霊など物の怪をあらわす隈取は黒いのですが、怨霊の血液は黒いのでしょうか?